2009May/06 窓

“屋根の下に公の心”と書いて、『窓』。

「吟遊詩人は聴き手が望むとおりに歌うものだ。
　自分の悲しみを癒すために歌ったり、
　自分の喜びを語ったりするののじゃない。
　聴き手の心を組みとって、
　ただただ聴き手のために歌うのだよ」

民主主義とは、窓を開けるということ。
窓という一つのことばが呼び覚ますのは、
日々の世界への風通しのいい眺望です。


子どもたちの心の窓を開いていくのが教員の務めであるならば、
決して独りよがりであってはいけない。
子どもたちが「今」伸びゆくにあたり
何を欲しているのかを見極める目と、
それに忠実に応える力量が問われる。

彼らには、大空を翔る翼がある。

それを感じながらも
うまく飛び立たせられない自分も知っている。

いちばんイライラするのは、
自分自身にあきらめて平気でいる我が心である・・・

“屋根の下に公の心”と書いて、『窓』。

「語らひを　重ねゆきつつ　気がつきぬ
　われの　こころに　開きたる　窓」

天皇が婚約が決まった際に詠まれた歌だそうです。

「窓」という言葉は、現在の天皇と深く結び付く言葉だそうで・・・

昭和の敗戦直後、現在の天皇が少年だった時
皇太子の家庭教師としてアメリカから呼ばれた
ヴァイニング夫人が記された本の題名が
「WINDOWS」（『皇太子の窓』）。

若い皇太子と共にした日々を通して、
二十世紀前半の世界を巻き込んだ無謀な戦争に敗れた
日本の姿を世界に生き生きと伝え、
その当時、広く読まれたそうです。

エリザベス・グレイ・ヴァイニングさん（ヴァイニング夫人）は
「日本での四ヶ年」で以下のように言っています。
「私が日本に来たいと思った主な理由は
　日本がその新憲法に
　国策遂行の手段として戦争を放棄したことであります。
　これは世界全体が進まなければならない方向への第一歩です。
　歴史上最も破壊的であった戦争が終わっても
　私どもはまだ平和を獲得したのではありません」

ヴァイニング夫人は、熱心なクエーカー教徒で、気骨ある平和主義者。
そして、子どもの本の作家さんでもありました。

『旅の子アダム』という
十三世紀イングランドの旅する少年吟遊詩人の物語は
１９４３年度のニューベリー賞を受賞されています。

このお話に登場する少年の吟遊詩人は、
世に尊敬される高名な吟遊詩人の父から
次のように教えられます。

「吟遊詩人は聴き手が望むとおりに歌うものだ。
　自分の悲しみを癒すために歌ったり、
　自分の喜びを語ったりするののじゃない。
　聴き手の心を組みとって、
　ただただ聴き手のために歌うのだよ」

詩人の長田　弘さんは、
ここまでを語られた後、以下のように締めくくられました。


中世の吟遊詩人のように
人々にとっての
自由の物語としての歴史の伝えてであること。

民主主義とは、窓を開けるということ。
窓という一つのことばが呼び覚ますのは、
日々の世界への風通しのいい眺望です。